1本のコンテンツに、権利者は何人いる?
全体図で、やさしく
※お断り※
このページは、権利処理に馴染みのない方に「だいたいこういうこと」を掴んでいただくため、私の個人的な解釈を記したものです。厳密な説明から少しずれますので、ご了承くださいませ!
で、誰がいるの? 一覧にするとこうなります
ドラマでも、バラエティでも、アニメでも、ウェブ動画でも、だいたい同じ顔ぶれです。
| 権利者 | 何の権利? | 相談先の例 |
|---|---|---|
| 原作者 | 小説・漫画などの著作権 | 出版社、著作者本人 |
| 脚本家 | 脚本の著作権 | 本人、脚本家の団体(日本脚本家連盟など) |
| 出演者 | 演技や歌、語りなど「実演」の権利(著作隣接権) | 所属事務所、aRma(委任している出演者の場合) |
| 音楽(作詞・作曲) | 曲そのものの著作権 | JASRAC、NexTone |
| 音源 | 録音した音の権利(いわゆる原盤権)と、歌手・演奏者の権利 | レコード会社など |
| 借りた素材 | 写真、映像、イラスト、美術品などの著作権 | 提供元、撮影者、作家 |
| 作った会社 | できあがった映像そのものの著作権 | 制作会社、放送局、製作委員会など |
数えてみると、けっこうな人数です
たとえば、架空の1時間ドラマで数えてみます。
原作が1。脚本が1。出演者が10人。流れる曲が15曲で、それぞれ「曲」と「音源」の2系統があるので30。借りた写真や映像が5。
ざっと50近い「確認先」です。しかもこれが、1話ぶん。10話のシリーズなら、その10倍近くになります。
なぜ「絡み合う」の? 理由は3つ
- 相談先がバラバラ — 上の表のとおり、権利の種類ごとに相談先が違います。1か所に聞けば全部わかる、という場所はありません
- 条件もバラバラ — Aさんは買い取り、Bさんは売上の○%、Cさんは1年ごとに固定額。同じコンテンツの中でも、人によって約束が違います(くわしくは「二次使用料とは」へ)
- 使い方が変わるたびに、全員分もう一度 — 配信したい、DVDにしたい、海外に売りたい。新しい使い方をするたびに、「この人はOK? 条件は?」を全員分、確認し直します
1本1本の糸はシンプルです。でも60本が、別々の相談先と、別々の条件と、別々の期限を持っている。これが「絡まっている」状態です。
ほどき方は、意外と地味です
特別な技があるわけではありません。コンテンツごとに、権利者の一覧を1枚持つ。これだけです。現場では「権利台帳」と呼びます。
| 誰が | 何の権利 | 相談先 | 条件 | いつまで |
|---|---|---|---|---|
| 原作 ○○さん | 原作の著作権 | △△出版 | 売上の○% | 2028年3月まで |
| 出演 □□さん | 実演 | ◇◇事務所 | 買い取り(配信まで) | 期限なし |
| 挿入歌「☆☆」 | 曲/音源 | JASRAC/××レコード | 包括/個別に固定額 | 配信1年ごと |
この1枚があれば、「配信できる?」に即答できます。売上の報告が来たら、誰にいくら払うかも計算できます。担当者が替わっても、次の人が困りません。逆にこの1枚がないと、毎回メールを掘り返すところから始まります。
「ヨリトキ」という名前は、糸の「縒り(より)」を解く、から来ています。絡まった権利の糸を1本ずつほどいて、一覧にして、進み具合とお金の流れが見える状態にする。それが私たちの仕事です。
もっと知りたい方へ
- 権利処理とは? — 洗い出しから記録まで、6つの工程
- 二次使用料とは? — 誰に、いくら、どう払うか
- 音楽の権利は「2系統」 — 曲と音源は、別の権利者
- 権利処理のQ&A
このページに関するよくある質問
権利者が見つからないときは、どうすればいいですか?
まず、契約書、制作時の資料、所属事務所や出版社、管理団体(出演者ならaRma、音楽ならJASRACなど)を通じて探します。それでも権利者や連絡先が分からない場合、文化庁長官の裁定を受け、通常の使用料に相当する補償金を支払って利用できる「裁定制度」があります。ただし、探索を尽くしたことが前提で、時間と手間がかかります。実務では、その素材を差し替える、またはカットする判断も選択肢に入れます。
自社で制作した映像なら、権利は全部自社のものですか?
映像そのものの著作権は、契約によって製作した会社にまとまることが多いです。しかし、映像の中に入っている出演者の実演、原作、脚本、音楽、音源、借りた素材の権利は、それぞれの権利者に残っています。「自社制作だから自由に使える」と考えて配信やグッズ化を進めると、出演者や音楽の権利で止まることがよくあります。
権利者の一覧(権利台帳)には、何を書けばいいですか?
最低限、コンテンツごとに「誰が」「何の権利を」「相談先はどこか」「どんな条件か(固定額か料率か、原資、期間、範囲)」「いつまでか」の5つです。これに、許諾の状況(済・確認中・不可)と、根拠になる契約書や許諾書の保管場所を足すと、次に使うときの確認が一覧だけで済みます。
まとめ
- 1本のコンテンツには、原作・脚本・出演者・音楽・音源・借りた素材・作った会社の権利が集まっている
- 相談先も、条件も、期限も、権利者ごとにバラバラ。これが「絡まり」の正体
- 新しい使い方をするたびに、全員分の確認が必要になる
- ほどき方は、コンテンツごとに「権利者の一覧」を1枚持つこと
「うちのコンテンツ、誰の権利が入っているのか一覧にできていない」という段階で大丈夫です。お気軽にご相談ください。
参考ページ
- 著作権法(e-Gov法令検索)(映画の著作物の著作権の帰属=第29条、実演家・レコード製作者の権利=第4章)
- 日本脚本家連盟「著作権を使用する方へ」(脚本の使用手続き)
- aRma(映像コンテンツ権利処理機構)「事業内容」(出演者の権利の窓口)
- JASRAC(日本音楽著作権協会)(音楽の著作権の管理)
- 文化庁「著作権者不明等の場合の裁定制度」(権利者が分からないときの制度)
2026年9月23日時点の情報です。制度や各団体の運用は変わることがあります。