売上報告が届いてから、支払明細を出すまで
二次利用の支払計算、現場では何をしているのか
- 1届く月次・四半期
配信プラットフォームから売上報告が届く
- 2そろえる対応表
作品名を社内の作品IDに読み替え、1枚の表に
- 3突き合わせる権利台帳
権利台帳から原資・料率・按分・締めを引く
- 4計算する作品×権利者ごと
原資 × 料率 × 按分。個人には源泉徴収も
- 5出す明細・報告書
権利者ごとの支払明細と、団体への利用報告
- 6残す支払の記録
いつ・誰に・いくら・何を根拠に払ったかを台帳に
毎月、作品 × 権利者 × 配信の形の数だけ、この6工程が回る
※お断り※
このページは、権利処理に馴染みのない方に「だいたいこういうこと」を掴んでいただくため、私の個人的な解釈を記したものです。厳密な説明から少しずれますので、ご了承くださいませ! 出てくる数字はすべて説明用の架空の値です。
1. 届く: 売上報告は、形がそろっていない
最初に届くのは、配信プラットフォームからの売上報告です。中身は基本的にエピソードごとの売上で、大きく違うわけではありません。ただ、プラットフォームごとに、届く周期や形式が少しずつ違います。
| プラットフォームA | プラットフォームB | |
|---|---|---|
| 周期 | 月ごと | 四半期ごと |
| 金額 | 税込 | 税抜、手数料控除後 |
| 形式 | Excelが添付で届く | 管理画面からCSVを自分で落とす |
作品を3つのプラットフォームに出していれば、3種類の報告が、別々のタイミングで届きます。「今月は何が届いて、何がまだか」を一覧にするところから、仕事が始まります。
2. そろえる: 「同じ作品」を、同じ名前にする
届いた報告を、そのまま計算には使えません。プラットフォームAでは「作品名(第1話)」、Bでは「作品名 #1」、社内の台帳では管理番号。同じ作品が3つの名前で存在しているのが普通です。
だから、すべての報告を社内の作品IDに読み替えて、1枚の表にそろえます。地味ですが、ここを手作業でやっていると、毎月ここだけで半日消えます。読み替えの対応表を一度作って使い回すのが、最初の効率化です。
3. 突き合わせる: 権利台帳と照らす
そろえた売上を、権利台帳と突き合わせます。権利台帳とは、作品ごとに「誰が・何の権利を・どんな条件で」を一覧にしたものです。支払計算に必要なのは、そのうち次の4つです。
- 原資 — その権利者への支払いは、どの売上を元にするか(広告売上そのままか、入金額か、控除後か)
- 料率か固定額か — 売上の何%か、それとも決まった額か
- 按分 — 出演者なら寄与率、複数作品なら作品ごとの分け方
- 締め — いつ集計して、いつまでに払うか
4. 計算する: 架空の1作品で
ドラマ1作品、権利者3人、広告付き無料配信の今月の売上が100万円だったとします。数字はすべて説明用です。
| 権利者 | 条件 | 原資 | 今月の支払額 |
|---|---|---|---|
| 出演者(3人分の枠) | 売上の10%を、寄与率で按分 | 100万円 | 10万円 → 5万・3万・2万 |
| 原作者 | 売上の8%。ただし手数料30%控除後 | 70万円 | 5.6万円 |
| 脚本家 | 四半期ごとに集計 | — | 今月は払わない(来月まとめて) |
3人しかいないのに、原資が2種類、締めの周期が2種類あります。これが10作品、権利者20人、配信3種類になると、毎月300行を超えます。しかも行ごとに条件が違う。
さらに、金額が出たあとにもう一段あります。個人の権利者に払う出演料や著作権の使用料は、所得税の源泉徴収の対象です。支払額から税を差し引いて納め、権利者には差し引き後の額を渡します。会社への支払いは対象外です。ここは税理士と決めた運用に従います。
5. 出す: 支払明細と、団体への報告
計算が終わったら、権利者ごとに支払明細を作ります。明細に書くのは、対象の作品と期間、原資、料率または固定額、計算した金額、控除の内訳、支払日。権利者が明細だけで「なぜこの金額か」を追えることが目標です。これができていると、問い合わせが激減します。
団体を通す権利者は、団体の書式に合わせます。出演者ならaRma(映像コンテンツ権利処理機構)、音楽ならJASRACやNexTone、脚本なら脚本家の団体が、それぞれ利用報告の書式を定めています。書式に合わせて売上と利用実績を報告し、団体が権利者へ分配します。
6. 残す: 次の月と、次の問い合わせのために
払って終わり、ではありません。台帳に「いつ、誰に、いくら、何を根拠に払ったか」を残します。これがあると、翌月は差分だけ見ればよく、権利者から「去年の分はどうなっていますか」と聞かれても、その場で答えられます。
逆に、振込の記録は経理、明細は権利担当のメール、条件は法務のキャビネット、と散らばっていると、1件の問い合わせに3部署へ聞いて回ることになります。
現場で起きた、3つの失敗
- 原資の違いを、1つの列で計算した出演者は「売上そのまま」、原作者は「控除後」なのに、Excelの原資列が1つ。数か月気づかず、あとから差額の精算と謝罪に半年かかった
- どの作品の、どの権利者への支払いが済んでいるか、一目で分からなかった「この作品、今期の支払いは全部終わっている?」と聞かれても、メールと振込記録を掘り返さないと答えられない。処理の状況が一覧になっておらず、済んだ相手に二重に払いかけ、まだの相手を年末まで見落とした
- 四半期締めの権利者を、月次の流れで忘れた毎月の締めに集中していて、3か月に1度の支払いが抜けた。権利者からの連絡で気づき、信用を落とした。台帳に締めの周期を持っていれば、機械的に拾えた
ヨリトキが引き受けているのは、この6工程です
ヨリトキは、この「届く」から「残す」までを、業務委託でまるごと引き受けています。売上報告の取り込み、権利台帳との突き合わせ、計算、支払明細と報告書の作成、記録。そして台帳がそろうと、コンテンツごとの収支がそのまま見えるようになり、次にどの作品へ投資するかの材料になります。くわしくはサービス内容へ。
関連する用語
- 印税計算 — 売上に対する料率で支払額を計算すること。原資・料率・按分・締めの4つ。用語ページ
- 二次使用料 — 二次利用のときに権利者へ払う対価。用語ページ
- 権利処理 — 洗い出しから記録までの6工程。用語ページ
このページに関するよくある質問
売上報告は、どのくらいの頻度で届きますか?
配信の形とプラットフォームによって違います。月ごとに届くものもあれば、四半期ごとのものもあります。同じ作品を複数のプラットフォームで配信していると、届く周期も形式もバラバラになるので、「いつ・どこから・どの形で届くか」を一覧にしておくのが最初の仕事です。
個人の権利者に払うとき、税金の処理はどうなりますか?
個人に払う出演料や原稿料、著作権の使用料などは、所得税の源泉徴収の対象になる報酬です。支払額から所得税を差し引いて納め、権利者には差し引き後の額と明細を渡します。会社(法人)への支払いは対象外です。税率や手続きは国税庁の案内を確認し、迷う場合は税理士に相談してください。
支払明細には、何を書けばいいですか?
最低限、対象の作品と期間、原資(どの売上か)、料率または固定額、計算した金額、控除があればその内訳、支払日です。権利者が「なぜこの金額か」を明細だけで追えるようにしておくと、問い合わせが減ります。団体(aRmaやJASRACなど)への支払いは、団体が定めた報告書式に合わせます。
まとめ
- 支払計算は「届く・そろえる・突き合わせる・計算する・出す・残す」の6工程。毎月、作品×権利者×配信の形の数だけ回る
- 時間を食うのは計算ではなく、報告の形をそろえることと、台帳から条件を見つけること
- 失敗の原因は「条件・売上・支払の記録」が別々の場所にあること。1つの台帳にまとめれば機械的にできる
「毎月、締め前にExcelと格闘している」「担当者が替わったら回らなくなりそう」という段階で大丈夫です。お気軽にご相談ください。
参考ページ
- aRma「使用料規程」(PDF)(寄与率の定義と、配信の使用料の計算式)
- JASRAC「インターネット上での音楽利用」(配信での音楽利用の手続き)
- 日本脚本家連盟「利用報告」(脚本の利用報告の書式)
- 国税庁 タックスアンサー No.2792「源泉徴収が必要な報酬・料金等とは」(個人への出演料・原稿料等の源泉徴収)
2026年9月25日時点の情報です。制度や各団体の運用は変わることがあります。